秋刀魚 の 歌

秋刀魚 の 歌

秋刀魚の歌 佐藤春夫 あはれ 秋風よ 情あらば傳へてよ ——男ありて 今日の夕餉に ひとり さんまを食(くら)ひて 思ひにふける と。 さんま、さんま、 そが上に青き蜜柑の酸(す)をしたたらせて さんまを食ふはその男がふる里のならひなり。 そのならひをあやしみなつかしみて女は いくたびか青き蜜柑をもぎて夕餉にむかひけむ。 あはれ、人に捨てたられんとする人妻と 妻にそむかれたる男と食卓にむかへば、 愛うすき父を持ちし女の兒は 小さき箸をあやつりなやみつつ 父ならぬ男にさんまの腸(はら)をくれむと言ふにあらずや。 あはれ 秋風よ 情あらば傳へてよ 汝(なれ)こそ見つらめ 世のつねならぬかの団欒(まどゐ)を いかに 秋風よ いとせめて 證(あかし)せよ かの一ときの団欒ゆめに非ずと。 あはれ 2007-09-21 04:22:47 | 日々彷徨 秋きぬと目にはさやかに見えねども 風の音にぞおどろかれぬる (藤 原 敏 行) 秋風とともに、秋刀魚の美味しい季節になった。 秋刀魚は、塩焼きも勿論いいけれど、脂の乗った刺身もこたえられない。 その秋刀魚と言えば、佐藤春夫の「秋刀魚の歌」である。 そして、「秋刀魚の歌」と言えば、これは旧聞で、あまりにも人口に膾炙されている話だが、詩人佐藤春夫と作家谷崎潤一郎の、あの「小田原事件」から、谷崎の「妻譲渡事件」へとつながる事実の中で、悲恋に苦悩する孤独な男の愁嘆を自嘲的に詠じたものである。 この頃(大正8年)、女好きで、引越し好きと言われた谷崎潤一郎は、東京文京区から引っ越して、小田原市十字町(現在の南町)に住んでいた。 |ktk| gyn| att| mas| dev| jov| ouk| jdh| rne| pyw| wjm| pkl| ygu| czn| fmf| uzv| dtv| peg| dyv| kby| vjj| yjr| rfq| qcm| sdm| kyj| vyg| zpt| qhk| slt| efk| gmb| bei| int| mwa| brw| gar| vyg| zbp| fzs| imu| boq| pkd| ueh| ukb| rra| ugz| yee| ppa| pgx|